日本は金利を大幅に引き上げるか、円安を許容するかを迫られている    佐々木 融(ふくおかフィナンシャルグループチーフ・ストラテジスト) 

1.筆者が以前から指摘しているように、円の弱さの根本的な原因は次の3 点だ。①日本の実質金利が大幅にマイナスになっていること、②日本と他主要国の名目金利差が歴史的な大きさとなっていること、③日本の国際収支の悪化だ。つまり、今後仮にFRB が利下げを行って、ドル安基調となったとしても、円の弱さが続けば、結果的に円安・ドル高傾向が続く可能性がある。 

2.円は21 年、22 年、23 年と毎年主要通貨の中でほぼ最弱の通貨だった。今年も今のところ最弱通貨だ。円はメキシコ・ペソに対して8 割下落し、ドルやブラジルレアル、スイスフランに対して5 割下落している。人民元、ユーロ、英ポンド、豪ドルなどに対しては3~4 割下落している。主要通貨、主要新興国通貨の中で唯一円より弱かったのはトルコ・リラだが、今年の円はそのトルコ・リラよりも弱い。ドル円相場の大幅上昇は、米国との金利差だけが原因ではないのだ。 

3.円安の根本原因のうち、日本の国際収支悪化は日本の経済社会全体の変容の結果を表しており、簡単に改善することはできない。ただ、日本銀行が実質金利がプラスになるほど大幅に金利を引き上げれば、円安要因の一部は緩和できる。したがって、日本は金利を大幅に引き上げるか、円安を許容するのか二者択一を迫られている。  

(参考:「週刊東洋経済」2024 年6 月1 日号) 

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