1.1985年に味の素に入社し、人事部に配属された。あの頃と比べると人事部はいろんな進化を遂げていると思う。当時は1つの目標に向かい、愛社精神を育みながら均一な組織をつくることが求められた。今は一人ひとりの考えを認め、多様性を大事にして企業の価値を上げていくことが重要になっている。
2.ただ、今の人事は人員に対して仕事量が多すぎる。「失われた30年」の間に人員は削減され、人件費も抑制された。ただ業務の整理は不可欠だ。あれもこれもやろうとしてはいけない。私は「やらないことを決めよう」と話している。例えば、2023年2月には中期経営計画の企画をやめ、独自指標への切り替えを発表。評価制度は部門評価をやめるなどした。やめてみて、問題があれば戻せばいいのだ。
3.僕は労働組合の専従を10年間勤めていた。当時、会社に「組合員をもっと団体交渉にオブザーバーとして参加させてくれ」と要求したが、「絶対に嫌だ」と却下された。自分が社長になった今は団交をオープンにしている。その方が真剣に議論している状況を理解してもらえるし、経営に対する親近感も生まれる。経営会議をオープンにしている。透明性は信頼感を生むためのカギだと思っている。
(参考:「日経ビジネス」2024 年9 月9 日号)