耳より情報2022年5月 No.213

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

日本のものづくりは解体の危機(その1、構想力の欠如が製造業を没落させた)寺島実郎(日本総合研究所会長)

1.日本の製造業が没落した理由を端的に言うと、構想力とビジョンを持った人材がいなくなった。東芝の今の状況がそれを象徴している。日本のものづくりの誇りのような会社がマネーゲームによる解体の危機に瀕(ひん)している。経営のエネルギーの大半が従業員でも顧客でもなく、株主である投資ファンドへの対策に振り向けられ、消耗させられている。
2.これは、いわばMBAシンドロームの弊害でもある。1980年代以降、日本の大企業は優秀な若手を米国の大学院に留学させたが、そこでは企業価値をどうやって最大化するかを習う。そこそこのスキルを身に付けて帰ってくると、「自分価値の最大化」に気がつく。製造業の会社の若手は年収はよくて1000万円強。そこに「外資やコンサルに転ずれば、30代で数千万円」というような誘いがかかる。これで勇んで外資系金融やコンサルティング企業に転じた人は山ほどいる。
3.その人たちが日本の産業界を支える柱となったが、コンサルとして日本企業にアドバスしたのは選択と集中だ。事業部制にして資産を切り売りし、M&Aをして儲かる体質にしよう、と。その結果日本企業のよさである、人材の総合性や会社に対するロイヤルティーなどが崩れ落ちていった。ここ10年ほど構想力とビジョンを持った経済官僚も見なくなってしまった。

(参考:「週刊東洋経済」2022年3月26日号)

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