耳より情報2022年6月 No.233

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

安易な人件費削減で、不採算事業を存置させた 山田久(日本総合研究所副理事長)

1.なぜ、日本だけ賃金が上がらないのか。終身雇用制度の下、不況期に雇用を守って賃金は犠牲にするというパターンが繰り返された結果、好況期にもそれを理由に、企業の固定費増加につながるベアは抑制されてきたためだ。「日本の問題はデフレ」という思い込みが、長期政権となった安部政権の喧伝(けんでん)で、染み付いてしまったのかもしれない。
2.また、企業側からは、「労働生産性が低いから賃金を上げられないのだ」という主張がよく聞かれた。だが、労働問題に詳しい日本総合研究所の山田久副理事長は、「これは誤解だ」とする。日本では近年、短時間労働の高齢者や女性などのシェアが高まり、それが1人当たりの数字を引き下げている。「時間当たり労働生産性で比較すると、00年以降の上昇ペースは、米国やスウェーデンは下回るものの、ドイツ、フランス、英国など欧州の主要国を上回る」(山田氏)という。
3.山田氏は、「生産性に見合った賃金アッフをせず、安易な人件費削減を行うことで、むしろ不採算事業を存置させている」と問題提起する。低賃金が労働生産性の低下につながっているのだ。販売価格への転嫁、それを消費者が受け入れられる持続的な賃上げを実現しなければ、日本経済はますます縮む。

(参考:「週刊東洋経済」2022年4月2日号)

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