このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
「義は人の正路なり」(孟子) 數土文夫(JFEホールディングス顧問)
1.1900年、米国で「武士道」を刊行した新渡戸稲造は同書で、「義」は武士にとって最も厳しい教えであり、裏取引や不正ほど忌(い)み嫌われるものはないと記しています。新渡戸によれば、「義」は正義の道理であり、国、社会に対する成人の責任義務であるのです。新渡戸はまた、孔子の第一後継者と自認する孟子の「義」に関する考え方も紹介しています。「義は人の正路(せいろ)なり」。
2.孟子は、人が義を守り、実践することは、人の正道でありまして「義」を誹謗(ひぼう)することは、自暴(じぼう)、即ち、自らを暴(そこな)うことであり、「義」を貫こうとしないこと、これを自棄(じき)、即ち、自らを棄(す)てることだと述べています。自暴自棄の語源です。成人において「義」を実践しないことは、自暴自棄だと警鐘(けいしょう)を鳴らしているのです。
(参考:「致知」2022年7月号)