耳より情報2022年7月 No.241

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

山下俊彦(松下電器「現パナソニック」、3代目社長)の経営哲学(その2) 梅沢正邦(ジャーナリスト、元「週刊東洋経済」副編集長、論説委員長)

1.日本の衰退は二段階で起こった。バブルのおごりが第一段階。第二段は、バブル崩壊で周章狼狽した経営者たちがアングロサクソン流の株価第一、短期収益優先の新自由主義に飛びつき、曲がりなりにも日本の高度成長を実現した「日本型経営」を全否定してしまったことだ。松下電器も例外ではない。
2.2000年に松下電器社長になった中村邦夫。「幸之助神話を壊した男」(森一夫、日経ビジネス人文庫)である。就任2年目、1万人の希望退職を募集した。終戦直後の混乱期を除いて松下電器は一度も人員整理をしたことがない。日本企業の聖域でもあった終身雇用制に終止符を打ったのである。さらに重大なのは就任初年度、松下電器独自の事業部制を解体したことだ。
3.しかし、山下は社長になってからも言い切った。「理想的な企業は、従業員一人ひとりの目標の延長線上に会社の目標もある。そういう姿が一番望ましいわけです」。山下は幸之助の事業部制に共振した。事業部制が事業部長、ひいては従業員一人ひとりの「個人」の主体性、自主性に大きく信を置くシステムだったからだ。もし、山下という経営資源、その経営思想が後の世代にしっかり編成されていたら、パナソニックは今のパナソニックではない。

(参考:「Wedge」2022年6月号)

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