このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
美しい心だけでは企業は成長させられない 稲盛 和夫(京セラ創業者、22 年 8 月、90 歳で逝去)
1.素晴らしい生き方を示し、素晴らしい人間性で対する。そうすれば、相手も心を打たれ、そういう生き方を 返してくれるはずです。経営者として、社員はもちろん、会社を取り巻くすべての人たちを感化し、変えて いくというほどに善きことを思い、善きことを行わなければなりません。そうすれば必ず、めぐりめぐって、 自分に返ってくる。それが世の真理なのです。
2.しかし、誤解をしてはなりません。心を高めることが大切ですが、単にやさしく美しい心だけでは、採算をとる厳しさや不況に立ち向かう気概が不足し、企業を成長発展させていくこができないからです。「何としても売上をあげ、利益を確保していくのだ」という凄(すさ)まじい気概がなければなりません。
3.これは一企業にとどまらず、閉塞(へいそく)感漂う日本経済の再生に関しても同じです。現在の日本を取り巻く状況を打破し、再び成長軌道に戻ろうとするなら、ひとりひとりの経営者が凄まじいまでの闘争心を持つことが不可欠であると、私は考えています。しかし、この闘争心や意志力は、諸刃の剣です。誤って限界を超えれば、自分自身や部下、集団をも破滅させてしまう危険があります。だからこそ、人間性を高める、心を高めるということが必要なのです。
(参考:日経ビジネス」2022 年 11 月 14 日号)