このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
死んでからも修行である 千玄室(茶道裏千家前家元、数え百歳)
1.私は復員してもう一度、最初から茶の稽古(けいこ)をやり直さないといけないと思って、ある時、父親に「道とは何ですか」と聞いたことがあるのです。そうしたら「死んでからも修行じゃ」と。なんで死んでからまで修行ができるのかその時は分からなかった。90歳くらいになった時に初めて「なるほどな。自分で選んで歩いてきた道が未完成であるのは当然や。私は幸にして道を誤ることがなかった。だとしたら死ぬ寸前、命が尽きるその瞬間まで自分は茶筅(ちゃせん)を持って茶を点てられるだろうか」と自問したのです。
2.私たち人間は誰もが大自然の一部です。大自然から生かされるという事実をしっかりと自覚し、皆がぜい沢を慎み、「青山(せいざん)緑(りょく)水(すい)、これ我が家」という心境で生きていけたら、人類が直面する危機は克服できる。そのこともまた伝えていけたらと思っています。
(参考:「致知」2022年4月号)