このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
AIはあくまで機械、根本的に自動化装置の枠から出ない 安宅 和人(慶応大学環境情報学部教授)
1.生成系AIが情報の世界を一変させようとしているが、従来の検索技術の流れとは全く異なるすごい変化が起きている。まず入力の仕組みが激変した。ChatGPTやBardのような生成系対話AIは、あいまいな質問であっても自然な回答を出せる。これまで「検索」が出せたのは、もっぱら答えがわかる質問だった。一方、生成系AIは非常に入り組んだ複合的な問いに対応することができる。
2.人間側に求められる力は、意味のある問いを立てること。出力された答えを正しく評価する、といった力だ。そうした能力を高めるうえでは、情報を統合して理解・識別する「知覚」の深さと質が最も肝心だと思う。AIは、意志があるように振り舞わせることができるが、あくまで機械。AIは根本的に自動化装置の枠から出ることはない。
3.私たちがイラつくような状況でも、AIは実に淡々と作業をする。これがAIの醍醐味だ。人間はこれまでずっと、煩悩から解放される方法や、心の平静を保つ方法を追い求めてきたが、AIはそれを実現している。しかし、AIがどれだけ進歩しても、意志を埋め込むべきではない。そもそも、そんなことをしたら使いにくくなるでしょう。
(参考:「週刊東洋経済」2023 年7 月29 日号)