
1. 思えば、私どもは大自然という大海の上に浮かぶ小島で生を営んでいるに過ぎないのである。高度に発達した科学と文明の恩恵に馴(な)れ過ぎて、人もまた自然の一部であることを忘れ、自然は人間のために存在し、人間の力で制御できるかのような錯覚に陥っているのではないかと思うことがある。
2. 伊勢神宮に伝わる鎌倉時代に書かれた「神道五部書」の一つに、「人は乃(すなわ)ち天下(あめのした)の賜(たま)わりしにものなり、心神(こころ)は傷(いた)ましむるなかれ」とある。人もまた自然と同じく天地(あめつち)の神によって生み出されたものであるという思想である。
3. 二宮尊徳の和歌に、「音もなく香もなくつねに天地(あめつち)は 書かざる経をくりかへしつつ」というものがある。思えば、いにしえの人々は現代人以上に自然との交わりが深く、自然の運行や観察を通して多くの知恵や、人と自然が調和して生きる大切さを学んでいたように思われる。そうして、この世が諸行無常であるが故に一期一会の人間関係を大切にし、四季折々の自然美に心をよせてきた。
(参考:「致知」2026 年10 月号)